ぴんぞろ/戌井昭人

昨年、大磯海岸近くにあるカフェで町田康さんの読書会に参加した。
その時の題材になった本。「ぴんぞろ」。

作者の戌井昭人さんは元々劇団を旗揚げし、のちに作家となった方。
少し前に公開された映画『俳優 亀岡拓次』が記憶に新しい。

個人的にはここ5年ほど戌井昭人さんに芥川賞を取ってほしいと応援している。
何回も候補には挙がっているのに・・・審査員の好みなんだろうな。

この本のあらすじは、脚本家の「おれ」が浅草の酉の市でイカサマ賭博に巻き込まれ、
ある事件をきっかけに、地方のさびれた温泉街のヌード劇場で司会業を営むことになる。
そこで知りあった三味線弾きのルリ婆さんと、その孫リッちゃんと奇妙な共同生活が始まる―

といった話。

そもそも「ぴんぞろ」の意味って何ぞやと思って調べたら、
2つのさいころの目にそろって「一の目」が出ること。

本の中でも行われるチンリロリン(サイコロと椀を使った賭博)では、
「ピンゾロ」を出すと、配当が10倍になるらしい。

一回目読んだ後は、「ああなんか不思議な小説だな」という印象しかなかった。
ただ二回目読んでみると、全く印象が変わる。
最初まったくツキから見放された主人公の「おれ」が、
サイコロを振って出た目に従うように、ただただ状況に流されて、
気がついたら温泉街で司会をしている。
いやいやいや、おかしいでしょと冷静に考えたら思う展開。

「なんでか分からないけどこうなっている」という表現をすごく自然に書くから、うっかり作品の世界にひきこまれてしまう。

そして、作品の中でキーとなるのが「サイコロ」。
作中で、主人公はサイコロを振る場面がいくつか出てくる。

出た目に注目してみると、この作品の面白さがじわじわとこみ上げてくる。

帯にもあるように、人生出たとこ勝負ってとこはある。
この先なんて考えたらキリがないし、不安になるだけだ。

計画的に生きることも大切だけど、
「神のみぞ知る」って楽観も時には必要なんじゃないだろうか。

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