この世界の片隅に(下)/こうの史代

この世界の片隅に

下巻は、上・中巻のほのぼのとした空気から一転、
戦争一色に変わり、昭和20年の終戦後まで描かれる。

周作の父は負傷して病院へ。
周作も軍事訓練で家を空けることになり、
すずは大黒柱不在の家を守ることを誓う。

義姉から姪っ子の晴美を連れて、父親のお見舞いを頼まれたすず。
病院の帰り、畑に落ちていた時限爆弾によって、
手をつないでいたはずの晴美と自分の右手を失う。

自分の居場所はどこなんだろうか。
自分は生きていいのだろうか。

子どももできず、晴美も守れない、右手も使えない。
この家に嫁いだ「妻」としての存在意義が見いだせない苦しさが伝わってくる。

中でも印象的なのは、空に飛んでいく鷺を追いかける場面。
鷺=すずが選ばなかった道、実家のある広島での生活や初恋の人と結ばれた未来。
でもそれはもうかなわないことで。

焼夷弾が落ちてくる。周作は体を張ってすずを守るが、
居場所がなくなってしまったすずは「広島に帰る」と伝える。

映画でもこのシーンで思わず泣いてしまったのだが、
周作はすずと一緒にいることを望んでいるのに、
すずはこんな自分は一緒にいれないと思っている。
このすれ違いが切ない。

「すずさんがイヤんならん限り 
すずさんの居場所はここじゃ」

晴美の死をすずのせいだと責めてしまった義姉、
自分のせいだと追い詰めていたすず。
義姉の発したこの一言で、お互いに赦され、本当の家族になった。

終戦を迎え、たとえ周りが焼野原でも、物が足りなくても、
居場所はここだと前を向いて生きる。

周作さんありがとう
この世界の片隅に
うちを見つけてくれてありがとう

すずという魅力的なキャラクターを通して、
日常の中に幸せがあることを教えてくれる、何度でも読み直したくなる作品だ。

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