MW[ムウ]Ⅰ・Ⅱ/手塚治虫

手塚作品だと後期作品が特に好きだ。
ブッダ、火の鳥、アドルフに告ぐ、そしてこのMW。

眉目秀麗で有能な銀行員「結城」と神父の「賀来」二人の男が主人公。
二人は、15年前に秘密化学兵器ガス・MWの事故によって全滅させられた「沖ノ真船島」の生き残りである。
結城はMWの後遺症を負い、当時事故を隠蔽した関係者に復讐をするため、次々と犯罪に手を染めていく。
一方、賀来は結城の犯罪を止めようとするが、神父という立場でありながら、
結城の誘惑に負け、神に背く行動をとってしまう。

1976年に青年誌ビッグコミックで連載開始したこの作品。
「アトム」など少年誌の要素はまったくなく、残虐で悪魔的な人間が描かれている。
何より、手塚治虫が同性愛を描いたっていう。エロいし、グロい。
今ではBL漫画なんて普通だけど、当時だったらかなり革新的だっただろう。
1970年代といえば、萩尾望都「ポーの一族」、竹宮恵子も「風と木の詩」を発表してるし、
BL史の先駆け的な作品の一つだったのかもしれない。

この作品を読んだ時、真っ先に胸糞悪さが残った。
犯罪を犯す結城が常に一枚上手なのだ。
結城という人物に「男と女」「善と悪」の境界を超えさせることで、
自分の常識や正義を疑えと言われているような気がしてくる。

「悪は成敗される」といった類の話は今まで幾度となく目にしてきた。
でもそんな単純明快な事ではなく、「裁かれない悪」の存在に心を惹かれてしまう。
MWを開発した国、保持した政府、隠蔽した役人だって悪だし、結城の犯罪に手を貸してしまう賀来神父も悪だ。
ラストに描かれる結城の微笑みの意味。
人間の愚かさと矛盾を嘲笑うかのようでぞっとする。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA